高地トレーニング

 スポーツに興味のある人なら、高地トレーニングという言葉を聞いたことがあると思います。

高地トレーニングとは?

 高地、つまり標高の高い場所で行うトレーニングのことです。

 ではなぜ、標高の高い場所でトレーニングを行うとよいのでしょうか? それは、標高の高い場所では、空気中の酸素が少ないため、低酸素状態になるからです。その低酸素状態を回避しようとして、自然と呼吸循環の機能が鍛えられます。

 つまり、普通に呼吸していては苦しいので、より多くの酸素を効率よく取り入れられるよう、呼吸機能がアップします。また、より多くの血液を全身に送り出せるよう、循環機能がアップします。

 標高としてはだいたい1000メートル以上が目安になります。選手の能力や目的によっては、もっと高い場所を選ぶこともあります。

赤血球の増加

 高地トレーニングの特徴のひとつは、何の練習もせず、安静にしていても、一定の効果が期待されることです。ただそこにいるだけで、低酸素状態が得られますから、人間の体はその状態を回避しようとして、酸素を運搬するための赤血球やヘモグロビンを増産します。ですから、高地に住んでいる人達は、特別なスポーツ選手でなくても、平地に住んでいる人に比べて、赤血球やヘモグロビンの値が高くなっています。

 トレーニングを終了して平地に戻っても、すぐにはその赤血球は減らないので(時間の経過と共に、しだいに適正な量に落ち着いていく)、その状態で試合をすれば、より有利な状態になるでしょう。

 ただし、モータースポーツのように、激しい脱水に陥りやすい競技においては、あまり赤血球が増えすぎて血が濃くなると、血管がつまりやすくなって危険なので注意が必要です。(→参照:基礎講座「ヘモグロビン」

心肺機能の鍛錬

 低酸素状態で運動をする場合、平地において運動をするのに比べて、同じトレーニングメニューでも、より多くの心肺負荷をかけることになります。したがって、筋肉や関節などに無理な負担を強いることなく、心肺機能を鍛錬することが可能です。

 たとえば、平地で3キロのランニングをするよりも、高地で1キロのランニングをした方が、膝や足首などに負担をかけず、効果的に心肺機能を鍛えることが可能だということです。そうすれば、トレーニングにかける時間も短縮できるメリットがあります。

 標高の高いところに住んでいる人達は、スポーツ選手でなくとも、日常の動作によって鍛えられているので、平地に住んでいる人に比べ、高い心肺能力を持っています。

高地トレーニングの問題点は?

 低酸素の状態があまり厳しすぎると、人体の細胞は正常に機能しなくなります。そうすると、いわゆる高山病のように、気分が悪くなる、意識がもうろうとする、などの症状が現れ、トレーニングどころか、体を壊すことにもなりかねません。素人判断せず、専門家の指導を仰ぎ、また本人の身体能力や体調に応じて、無理なく注意深く行うべきです。

 また、標高の高い場所においては、重力の影響が小さくなることから、運動をするには有利な条件となります。つまり、走ったり飛んだりしたとき、同じ能力でもよい記録が出るということです。

 これは、試合をする上では有利な話ですが、筋力トレーニングにとっては逆に不利な条件であるといえます。より重い負荷をかけないと、楽な運動になってしまうからです。

 つまり、高地トレーニングは、心肺機能の鍛錬には有利ですが、筋力トレーニングには不利であるということです。最近は、この問題を回避するため、標高の低い場所で、高地トレーニングと同等の効果を得ようとする試みが行われています。トレーニングルームの室内を低酸素状態に保ち、その中で運動を行うというものです。特別な設備が必要ですし、運動のメニューも限られ、誰にでも出来るものではありませんが、その様なトレーニングもあるということです。

高地トレーニングの危険性について

 高地トレーニングの管理には、専門的な知識が必要です。ただ苦しい思いをすれば、強くなるというようなものではありません。必ず、専門のスポーツトレーナーなどに相談の上、適正に行ってください。

2007.07.04