水分摂取は計画的に
トレーニング、練習走行、レースの別に関わりなく、水分は常に計画的に摂取するよう心がけます。
運動によって水分を失い、のどの「渇き」を覚えた時点では、すでに脱水症状は始まっています。そうなってから飲むのではなく、そうなる前から、計画的に水分を補給することが必要です。
走行のために必要となる水分量のおおよそは、前回述べたような方法で算出します。さらに、当日の気象条件や走行の内容などを加味して考えればよいでしょう。
とはいえ、時間経過と共に、汗や息の中に水分が失われていきますし、尿として排泄される分もありますから、せっかく取った水分はまた失われていきます。また、走行前や走行中に失われる水分量は、予測とは異なっているかもしれません。
ですから、実際には、その時々で測定した体重を目安にして、水分量をコントロールしていきます。レース前の体重が、平常の体重+1キロくらいになっていれば、レース中に4リットルの水分を失っても、3キロの脱水で済みます。さらにレース中に1リットル近くを水分補給できれば、2キロの脱水で済み、重篤な脱水症状を来さないで済みます。
走行前は濡れぞうきん
走行前のドライバーは十分に水分を含んで、しぼっていないスポンジや濡れ雑巾のようであるべき、と言われています。
雑巾を濡らす場合、コップの水をざっとかけても、表面を流れ落ちてしまい、雑巾の繊維の奥までは水が浸みていきません。しかし、雨漏りの落ちるような処に雑巾を置いておけば、一滴一滴はわずかでも、やがて水分を十分に吸収してぼとぼとになるでしょう。
レーサーの水分の取り方も同じです。一気に水分を取ると、血管内の水分量が一時的に急増するため、人間の体は、自動的に尿量を増やして調節します。そうすると、せっかく飲んだ水が尿に排泄されてしまい、体の細胞の奥まで水分が浸み通りません。むしろ雨だれを落とすように、わずかずつ、じっくりと水分を取った方が、体の中に十分に水分を貯め込むことができるのです。
走行直前のレーサーは、しぼっていない濡れ雑巾をイメージして、ぼたぼたと水分が滴り落ちそうなくらい、体中の細胞に十分に水分を蓄えておきましょう。
水分の取り方
予定のレースの1日前からは、十分な水分をとります。トイレに行く回数がふだんより多いくらいにします。
レース開始の1、2時間前からは、さらに十分な水分をとります。1回に100〜200mlの水分を、15〜30分毎にとり、体中の細胞に十分に水分を行き渡らせます。1回に飲む量が多すぎると、尿量を増やすばかりでよくありません。
レース開始後も、15分から30分毎に150〜300mlの水分を摂取することが理想的です。温度は10度くらいの冷たいものの方が、20度前後の温いものより吸収が速く、上昇した体温を下げる意味でも役に立ちます。
何を飲んだら良いか
摂取する水分の種類としては、十分に鍛えられたスポーツマンなら、普通の水道水でも十分です。(ただし生水でない方が理想的)麦茶もよいでしょう。体力のない選手ほど、塩類の喪失が多くなるので、塩分を取る必要があります。
また、長時間に及ぶ持久運動(マラソンなど)では、血糖の低下を防ぐために、糖分の補給も効果的です。短時間(人によるが、おおよそ30分〜1時間未満)のスポーツなら、体に蓄えられているエネルギーで間に合うので、糖分を補う必要はありません。
こうしたことから、市販のスポーツドリンクが用いられることが多いのです。ただ、一般に売られている製品は、飲んで美味しい味に調整されているため、そのままスポーツに用いると、やや濃すぎます。半分〜3分の2くらいの濃度に薄めた方が理想的です。また、ステビアなどの人工甘味料を含むものは、かえって血糖を下げることがあるので、スポーツ時の飲料には適しません。
それ以外の飲み物では、牛乳(できれば低脂肪乳)や100%果汁が奨められます。ただし、牛乳は消化されるのに比較的時間がかかるので、レース直前やレース中の飲み物には向きません。また、牛乳を飲むとお腹がゴロゴロしたり痛くなったりする人にも薦められません。
果汁は生ではなく、濃縮果汁還元による製品でかまいません。ただし、一般に果汁飲料は糖分が濃すぎるので、水で半分程度に薄めた方が理想的です。
飲料中の糖分が多くなりすぎると、胃を通過する時間が長くなり、小腸から水分が吸収されるまでに時間がかかることになります。ですから、レース中の飲み物は、わずかに甘みを感じる程度にした方がよいでしょう。
アルコール・カフェインを避ける
これらの物質は、尿量を増やす働きがあります。そのため、これらの物質を取っていると、いくら水を飲んでも、体は脱水傾向になります。ですから、レースの予定される1、2日前からは、これらの摂取を控えます。
カフェインの含まれる飲料には、コーヒーばかりでなく、紅茶、緑茶、コーラ等も含まれます。(「薬物の影響2」参照)
最近は、国内レースでもドーピング検査が行われるようになってきました。そうした意味でも、これらの物質をレース前に取ることは避けましょう。
塩分をとる
大量の汗をかくと、汗のなかに塩分が失われます。体力のない人ほど、多くの塩分を失います。そのため、梅干しや漬け物、みそ汁などで塩分を補うことが大切です。(塩味なら何でもいいのです)市販されているスポーツドリンクのほとんどには、塩分があらかじめ含まれています。
逆に塩分の取りすぎは、心臓や腎臓に負担をかけることになります。何事も、やりすぎはいけません。
注意
こうした提言は、健康な方がスポーツすることを前提としています。血圧のコントロールに問題があったり、水分を取りすぎると動悸がしたり、浮腫が強く出たりするような場合は、必要以上の水分負荷は危険ですのでご注意下さい。
以下のような症状やその心配のある方は、事前にご相談下さい。
- 心臓病
- 高血圧
- 腎機能障害
- 糖尿病
- あらゆる原因による浮腫(むくみ)
2002.09.18