水分の出入りを把握する
脱水対策を考える上で、まずは、現在の状況がどうなっているのか、水分の出入りについて把握するのが一番です。
「体重のしくみと管理」で述べたように、1日の短い時間での体重変化は、ほとんど水分の出入りを反映しています。100ccの水を飲めば、その瞬間は確実に100グラムだけ体重が増えるのです。
朝起きたとき、寝る前、各走行セッションの前後など、1日に何度も体重を量ってみます。マシンから降りた後は、なるべく早く測定した方が、走行中の状態を把握するために有益です。水分を補給したり、食事をとったりした後では、走行による体重の変化量が正確に把握できません。
一方で、摂取した水分の量を、時刻と共に記録していきます。飲み物や汁物だけでなく、固形の食事の中にも水分が含まれます。ほとんどの場合、その食品の重さがだいたいの水分量に相当します。(100グラムのごはんは、約100ccの水分を含むと考えます。)細かく検証するには、食事の重さもいちいち量ってみればよいのですが、水っぽいものだけ計算してもかまいません。
水分の出入りを評価・検討する
脱水状態でも、満腹でもない、自分の平常状態の体重を把握します。朝、食事や運動を始める前の体重が、だいたいそれに相当すると思います。
健康な成人の場合、体重の約60%が水分です。体重が50キロの人は約30リットル、体重が70キロの人は約42リットルが水分量であると考えます。
体に含まれる水分量=体重×0.6(キログラム)
「熱と脱水」で書いたように、体に含まれる水分量の10%以上を失うと、脱水の自覚症状が現れます。15%を越えると、重篤な身体症状を示し、場合によっては生命の危険もあります。したがって、喪失する水分量は、多くても10%程度にとどめるべきでしょう。
体重が50キロの人であれば、10%の脱水で、体重は3キロ減少します。体重が70キロの人であれば、10%の脱水で、体重は4.2キロ減少します。それ以上の脱水は危険ということです。
平常状態の体重から、その日の最小の体重を差し引いて、どれだけの脱水になっているか、計算してみましょう。
(平常状態の体重−減少時の体重)/体に含まれる水分量×100=脱水の程度(%)
脱水の程度が少なければ少ないほど、レースの最後まで、高いパフォーマンスを保つことが可能です。
必要な水分量を算出する
ある走行の前後で、体重が3キロ減ったとします。それが直接、走行によって失われた水分量を表してはいないかもしれません。走行中にドリンクを飲んだり、あるいは走行前後の体重測定の間に水分を補給したりした場合には、その分をさらに加味する必要があります。
1リットルの水分を途中で補給していれば、その走行で失った汗や水分の総量は、3+1=4リットルだったということになります。
失われた水分量=減った体重+その間に摂取した水分量
次に同じ走行を行う際には、その数字を目安にします。同じ気象条件で同じ走行を行えば、ほぼ同じだけの水分量が失われると考えられるからです。
何も対策をしなければ、4リットルの水分を失い、体重70キロ前後の人で、10%の脱水となってしまいます。逆に、4リットルの水分を補給できれば、脱水による影響は全くなく、持っているパフォーマンスを十分に発揮できることになります。
とはいえ、全く脱水がないように水分を補給するのは、実際には大変なことです。なるべく少なく抑えられるように、現実的な数字を計画すべきでしょう。
具体的な水分の補い方については、次に取り上げたいと思います。水分の補給の仕方を工夫したり、トレーニングを十分に積んだりすることにより、脱水の対策が上手くいけば、同じ気象条件で同じ運動を行っても、脱水の程度を軽く抑えることが可能です。そうすれば、持っている能力を、より効果的に発揮することができるのです。
2002.09.03