水分管理1

 コンディション調整のうち、最も重要な問題となるのが、水分の管理です。

 これまで何度も書いてきたように、レーサーのパフォーマンスを最も大きく左右するのは、レース後半に襲ってくる脱水症です。たとえ選手本人に自覚症状がなくても、長いレースを走っていると、汗や呼吸中の水蒸気として水分が失われ、次第に体内の水分が不足してきます。選手の多くが「疲労」として自覚している症状も、実はほとんどが脱水からくるものです。脱水がある程度以上になれば、自然と選手の能力は削がれ、思うようなレースが出来なくなるばかりか、最悪の場合には、生命をも危険な状態に陥れます。

 こうした脱水を来さないためには、どうしたらいいのでしょうか?

日頃のトレーニング

 太り気味の人や運動不足の人が急に動くと、だらだらと汗をかきますよね? 同じ運動量をこなしても、日頃から運動している人は、汗をかく量が少なくてすみます。日頃から十分なトレーニングを積み、たくさん汗をかいて、たくさん運動していれば、それだけで脱水にはなりにくくなります。

 また、そうすることで、汗のかき方も上手くなります。必要以上に水分を失うことがなくなり、汗の中に失われる電解質(ナトリウムなどのミネラル)も少なくて済むようになります。

 ですから、十分に鍛えられた選手では、試合中の水分摂取は、ただの水道水でも大丈夫なのです。脱水対策のできていない、つまりは体力のない選手ほど、ミネラルなどの成分に注意して、効果的な水分補給を計る必要があります。

環境設定

 体温など、人間の体内環境は、外界の環境変化に関わらず、ほぼ一定の状態に保たれるようになっています。外界の環境が変わると、それに対応して調節の設定をし直しますが、すぐには切り替えが効きません。そのため、急激に環境が変化すると、しばらくは設定の狂いが生じるのです。

 外気温が20度のところに長くいた人が、急に気温30度のところに移動すると、必要となる発汗量の設定誤差を修正するまで、時間がかかります。そのために、よけいな体力を消耗し、疲労を感じることになります。

 逆に、外気温20度のところに長くいた人が、急に気温10度のところに移動すると、体温を維持するために必要なエネルギーを十分に生産できず、ひどい寒さに凍えることになります。

 こうした設定の誤差に対応するには、本格的には1〜2ヶ月間、できれば1〜2週間、短くても3日くらいの慣れが必要と言われています。レーサーは日頃から暑い環境に身を置いた方が、脱水を来しにくくなります。

気象条件を知る

 脱水に関係する要因は、温度ばかりではありません。

 湿度が高いと、同じ量の汗をかいても、乾きにくくなります。汗は気化するときに体熱を奪って体温を下げますから、汗が気化しにくい条件では、同じだけ汗をかいても、体温が下がりにくくなるのです。つまり、無駄に汗をかくことになります。ですから、同じ気温でも、湿度が高いほど脱水を来しやすくなります。

 また、風のない日には、やはり汗は乾きにくくなります。といっても、運転中は狭いコックピットに収まっているわけですから、あまり風向や風力は関係ないかもしれません。ただ、マシンの中に効果的に空気の流れを取り込むことも、(フォーミュラではかなり難しいですが)考慮するべきでしょう。

 とはいえ、レースの日といえども、マシンに乗っていない時間の方が絶対に長いわけですから、そうしたことも微妙に関係していることを、きちんと頭に入れておいて下さい。

 こうした気象条件は、各レース毎に異なります。それにあわせて、水分の摂取量を的確に設定し、レースの最後までパフォーマンスを保っていくことが重要です。自分自身のセッティングを検討し、見直して、次のレースに活かしていくためにも、各レース時の気象条件についてはきちんと記録しておくことが大切です。

2002.07.03