レーサーの食事4

食材について

 レーサーだけでなく、どんな人にも言えることですが、なるべく偏らずにいろんな食品をとることが大切です。米、にんじん、卵、ピーマン、大根・・・などと使っている食材を数えて、1日30品目以上とるようにと一般的に言われていますが、現代では十分に取れていない人が多いのではないでしょうか。外食やインスタント食品に頼っている食生活では、なかなかこれを満たせません。

 前回前々回で述べたような食品の選び方はあくまでも目安です。「なるべくひかえる」とした食品も、少量なら差し支えありませんし、逆に「望ましい」食品ばかりで献立を考えれば、かえって内容の乏しい偏った食事になってしまいます。いろんな食品を取り入れた上で、なるべく望ましい食事を組み立てていくために、選択判断の拠り所としてもらえばよいのです。

 無農薬野菜などに凝る必要はありませんが、なるべく天然の新鮮なものを食べた方が良いのは当然です。

 人工甘味料には、糖分としてエネルギーにならない物質が使用されており、これを上手く使うことで総カロリー摂取量を減らすことが可能です。しかし、脱水・高体温などの過酷な条件下で、これらの人工産物が糖質代謝に及ぼす影響についてはまだ十分に解明されていない点もあり、レース時には避けた方が賢明と思われます。

 同じように、サプリメントと言われるような栄養剤の類も、内容の薬剤がすべて明らかでないものも多く、ドーピング陽性反応を避けるためにも、栄養代謝に対する不明の悪影響を避けるためにも、あまり使用しないことが勧められています。

エネルギーのバランス

 炭水化物、脂肪、蛋白という三大エネルギー源の摂取バランスも重要です。

 まず、摂取する総カロリーの4分の1を蛋白質とします。現代の食事、特に肉類を中心とする食事ではこれが多くなりすぎる傾向があるので気をつけましょう。肉や魚を食べない菜食主義者の場合には、植物性の蛋白を多く含む豆類をたくさん食べなければなりません。

 脂肪類と炭水化物の割合は、運動の激しさの程度によって調節します。レースウィークの食事では、炭水化物が総カロリーの半分を占めます。逆に、休息回復期にはやや脂肪の摂取量が高くなります。しかし、現代の日本食や洋食ではどうしても脂肪の摂取量が過多になりやすいので気をつけましょう。

  炭水化物 蛋白 脂肪
休息期 40% 25% 35%
軽いトレーニング 43% 32%
ハードトレーニング 47% 28%
レース 50% 25%

2002.02.14 補足および訂正

 上記に示した表は、アメリカで推奨されている値を参考にしたものです。しかし、一般に勧められている日本人の栄養所要量とあまりにかけ離れているため、再度資料を検討したところ、もともとの食生活に大きな違いがあるため、日本人にはもっと違った設定が必要と考えられました。日本人に推奨されている一般的な栄養バランスは次のようになっています。

炭水化物

蛋白

脂肪

55-65%

12-18%

20-30%

 これを参考にレーサーの食事の栄養バランスを設定すると次の様になると考えられます。

  炭水化物 蛋白 脂肪
休息期 55% 15% 30%
軽いトレーニング 58% 27%
ハードトレーニング 62% 23%
レース 65% 20%

 また、成長期の若者や激しいスポーツをする選手には、高タンパク食が望ましいとする意見もあります。ただし、必要以上に摂取したタンパク質はいずれ脂肪となって蓄積するだけでなく、タンパク質の取りすぎは腎臓や肝臓、胃腸に負担になります。比較的高タンパクの食事を行う場合には次の様なバランスが考えられます。

  炭水化物 蛋白 脂肪
休息期 50% 20% 30%
軽いトレーニング 53% 27%
ハードトレーニング 57% 23%
レース 60% 20%

 いずれにしても、脂肪と炭水化物の割合を、運動負荷の増減によって加減するのがポイントです。

調理法の選択

 同じ食品でも、調理の仕方によって良くも悪くもなります。

 ほとんどの和食は望ましい食事ですが、洋食の場合には、特に油分をとりすぎないように、気をつける必要があります。ホテルで朝食をとるときに、パンに何を塗るか、卵をどう調理してもらうか、そうした選択ひとつひとつを大事にしましょう。

  望ましい 比較的望ましい なるべく避ける
パンにつける ジャム 植物性マーガリン バター
卵料理 ゆで卵 卵焼き、目玉焼き スランブルエッグ、ハムエッグ
調理法 ゆでる 焼く 炒める、揚げる
飲み物 烏竜茶、低脂肪乳 牛乳、100%果汁 炭酸飲料、アルコール
パスタ バジリコ、たらこ、和風   ミートソース、ナポリタン、カルボナーラ
ファストフード マフィン、クラッカー ハンバーガー ドーナツ、フライドポテト、フライドチキン

 スポーツ栄養学の分野にはまだ研究課題も多く残っており、またそれぞれの専門家によって主張する説にもばらつきがあります。特定の説を鵜呑みにしないで判断するために、栄養学についての素養を高める必要があると思います。

 また、これまでこうした分野では、研究の進んでいるアメリカの方法を真似するのが一般的でしたが、アメリカと日本ではもともとの食文化が大きく違うので注意が必要です。また、人種によって消化酵素や代謝物質の活性に違いがあるため、同じものを同じだけ食べても同じ栄養同じ結果になるとは限りません。そうしたことを頭に入れた上で、これらの記事を参考にして頂きたいと思います。

 日本人のモータースポーツ選手に最も相応しい食事というのは、まだまだこれから探っていく必要がありそうです。

2002.02.05
2002.02.14追補