コースと運動特性
オーバルとロードコースのサーキットで、ドライバーに必要とされる運動特性はどのように異なるのでしょうか?
横G
オーバルコースは、いくつかの高速ターンとそれをつなぐ直線からなると考えられます。ふつうのロードコースでは、大きな横Gのかかる高速コーナーは1周に1〜2カ所程度ですが、オーバルではもっと頻繁に高速ターンを行うことになります。その度に大きな横Gがドライバーの頭をコースの外側に持っていこうとします。それに逆らって、ドライバーは自分の首を支えなければなりません。したがって、オーバルはロードコースに比べて、より首の筋力が求められ、首に厳しいといわれます。
逆に、最高速から急に減速して回るような小さなコーナーはありません。急ブレーキで頭が前に持って行かれるようなことは、あまり多くありません。したがって、前後方向の力よりも、横方向の力に耐えるための首の筋力が強く求められます。同じく首を鍛えたと言っても、オーバルとロードコースでは使う筋肉の場所がちょっと違うのです。したがって、どんなベテランの選手でも、オーバル1年目が首にきついのは当然のことでしょう。
同じ方向に曲がり続ける
ロードコースの場合、ある程度、右コーナーと左コーナーが入り交じっていますが、オーバルの場合はずっと同じ方向に曲がり続けます。したがって、首の片側にだけ大きな力がかかることになり、首の筋肉の収縮には左右差が生じます。こうした状況は、首や肩の周りの骨格・関節・筋肉・靭帯等にとって大きな負担となります。
たとえばテニスなどのラケットを使う競技では、利き手側とその反対側とでは必要とされる筋力が違うために、片側の筋だけが肥大することがあります。さらには、背骨にかかる筋力の左右差から、背骨が曲がってしまうことさえあります。
同じような危険性がオーバルのドライバーにも考えられます。首や背骨にかかる筋力のアンバランスから、首や背骨の靭帯を傷めたりする可能性が高いのです。それを防止するためには、大きな力を必要とされる方の筋力だけでなく、その反対側もバランスよく十分に鍛えなければなりません。
壁に激突する
オーバルのもうひとつの特徴は、壁際を高速で走るということでしょう。ロードコースでは、マシンが壁にぶつかる前に十分に減速がなされるように、芝生やグラベルの緩衝エリアが設けられています。しかしオーバルにはそれはありません。ひとつ間違えば、コンクリート壁に直接激突することになるのです。
したがってオーバルを走るドライバー達は、下腿(膝から下)の筋肉を好んでよく鍛えるといいます。クラッシュした際に最も骨折の可能性の高いのが、膝から下の足の骨だからです。ここを鍛えることにより、より大きなクラッシュにあっても、骨折せずに乗り切ることが可能なのです。
下腿の筋力の強さというのは、走行のパフォーマンスにはそれほど影響しないと考えられます。しかし、クラッシュする可能性を考慮して鍛えておく、それがオーバルドライバーの常識のようです。あるいは運悪く骨折した場合でも、十分に鍛えられた選手であれば、より短期間で戦列復帰することが可能であり、シーズンを棒に振らないで済むというわけです。
ペースカー走行
オーバルのレースではしばしばペースカーが入り、隊列走行が行われます。しばらくスローダウンした後、再び戦線開始。しばらくするとまたペースカーが入る、の繰り返しです。
ロードコースの場合、よほどのアクシデントでない限りペースカーの導入はなく、一度走り出したレースは止まりません。ですからロードコースの場合は、それこそマラソン並に2時間ぶっ続けで走り続けなければならないのです。
オーバルのレースでは、ペースカーが入ることにより、ときどきスローダウンが許されます。その間もレース周回数は進んでいますが、運動の強度は低下します。心拍数は低下し、首にかかる筋力も少なくて済み、酸素消費量も少なくて済みます。つまり、ある程度のインターバルをおいて、中距離走を繰り返すような具合なのです。
したがって、求められる運動特性は多少違ってきます。
ロードコース オーバル 運動の強度 やや弱い やや強い 運動の持続 長く持続する 運動と休息を繰り返す 選手の持つ運動特性の違いにより、オーバルが得意な選手、ロードコースが得意な選手があるのは当然です。しかし、筋力・持久力とも必要十分な能力を持つドライバーは、いずれのコースにも上手く対応するでしょう。
2001.06.14