モータースポーツの特徴1

運動特性

運動の強度と耐久性

 陸上や水泳・スキーなどの距離競技では、距離が短い場合にはスピードが速く、距離が長くなればスピードが遅いのが普通です。ですから、それぞれの選手の体質、素質に合わせて、瞬発力のある選手は短距離を、持久力のある選手は長距離を選択することが可能です。

 しかしモータースポーツでは、(一部の耐久レースなどをのぞけば)下のカテゴリーでは距離が短くラップタイムも遅く、カテゴリーが上に行けば、距離が長くラップタイムも速いのが普通です。ですから、上のカテゴリーに進むにつれて、必要とされる選手の体力はどんどん大きくなります。どんな選手も、瞬発力と持久力とを共に鍛えなければ、上のカテゴリーに進むことは難しいのです。

 従来、スポーツトレーニングにおいては、瞬発的な競技ではもっぱら瞬発力を中心に養い、持久的競技ではひたすら持久力に重点をおいてトレーニングを行うことが進められてきました。しかし近年、それらのトレーニングがほぼ頭打ちになったこともあり、瞬発的な競技で持久力を高め、持久的競技で瞬発力を伸ばすような方向に転換してきています。


 たとえば、短距離ランナーにおいても、予選、準決勝、決勝と勝ち抜くためには持久力が必要です。投てきや跳躍などの瞬発的な競技でも、試技を重ねる度に記録を伸ばしていくためには持久的な力が大切なのです。一方、マラソン選手においてもスピードが重要になってきています。駆け引きを重視するスローペースなマラソンは、もはや時代遅れになりました。何度もスパートを掛けて、瞬発力のない選手をふるい落としていく、そうした積極的なレースが多くなってきています。

 したがって最新のスポーツトレーニングにおいては、持久的瞬発力・瞬発的持久力を伸ばすトレーニング方法が注目されており、それはまさにモータースポーツのトレーニングとしても理にかなったものだと言えるでしょう。

予選と決勝

 レースの予選と決勝とは、同じマシンを使った走行でありながら、スポーツのカテゴリーとしては違うタイプの運動に属します。

 予選のアタックは、もっとも記録のねらえる1周、あるいは2〜3周のアタックが実質的な勝負となります。時間にして1分からせいぜい5分くらいです。決勝はレースによって異なりますが、F1クラスなら約2時間を走ります。

 つまりF1の予選は、マラソンの予選を800M走の速さで競っているような感じなのです。といっても、ふつうマラソンに予選はありませんから、1万メートル走の予選を400M走の速さで決めている、と想像してみて下さい。それはなんだかおかしいですよね。400Mトラックを1周走って速いからといって、25周走っても一番速いとは限りません。もし、それで遅かったために決勝に進めない選手がいたら、それは気の毒というものです。しかし、そんな予選が日常的に行われているのがモータースポーツなのです。それはモータースポーツが、選手の能力だけでなく、マシンの能力を反映する特殊なスポーツであることに起因しています。

 ドライバーの視点で考えれば、予選と決勝とは全く性質の異なるスポーツですから、それぞれが得意・不得意な選手がいるのも事実です。しかし、予選はあくまでも予選です。レーサーとしての速さは、「レース(決勝)での速さ」をもって評価されるのです。マラソン大会で、最初の1周だけ先頭を走ったランナーがいたとしても、「スタートは速かった」などと評価する人はいないでしょう。途中までどんなに快調にトップを独走していても、30キロ地点で脱落したら、それは敗者に違いありません。「あの選手は途中までは速い」などとは言わないのです。レースも同じです。レース距離を走りきった時点で、誰が一番先にチェッカーを受けるかが勝負であり、その前に脱落する選手はすべて敗者なのです。

2001.05.01