スポーツドライビング

 前回は、10分の5から10分の8の運転について書きました。今回は、一般にスポーツ・ドライビングと言われる10分の9以上の運転について考えてみましょう。

 「The Racing Driver」(Denis Jenkinson著)からの引用部分は文字色を変えてあります。

nine-tenths 10分の9

 スポーツドライビングと言われるのはここから先のレベルです。同書に依れば、レーサーは10分の9から10分の9.5までのレベルで運転を行う、とされています。もちろん、このあいだには、9.2や9.3のレベルもあるわけです。

nine-and-a-half-tenths 10分の9.5

 10分の9.5がスポーツドライビングの限界であり、目標であるとも言えます。たまにヒヤッとしながらも、テクニックでマシンをねじ伏せていきます。しかし状況によっては、スピンやコースアウトを喫する危険性があります。10分の9〜9.5のあいだで、なるべく9.5に近い運転を続けられることが、優れたレーサーに必要なことと考えられます。

 周回を重ねる毎に次第に速度をあげて、9から9.5に少しずつ迫っていくのが一般的ですが、天才的なドライバーほど短時間で9.5に迫ることが可能だと言われます。

 このレベルの運転では、ドライバーの集中力と緊張は高まり、心拍数も高い数値をたたき続けます。体力的な消耗が大きくなります。

ten-tenths 10分の10

 10分の10というのは、本当の限界の速さ=ある場所をある車で駆け抜けることの可能な最大の速度と考えることができます。このような状況では、ある程度の確率で確実にアクシデントが起こります。

 素人考えでは、レーサーは10分の10の運転を目標に行うべきであるように思いますが、Denis Jenkinson氏は10分の9〜9.5の走りを安定して行うことが大切だと述べています。本当に限界ぎりぎりではなく、紙一重のところで安全性を確保していなければなりません。10分の10で走る選手は、瞬間的には怖ろしく速く勇敢であるように見えますが、実は無謀なだけで、本当のプロフェッショナルな走りではないのです。

 同書の他の部分では、このような書き方もしています。

 『理論上、あるコーナーを走り抜けることのできる限界の速さが130M.P.H(1時間に130マイル進む速さ)であるとき、優れたドライバーは毎周回、確実に、安定して129M.P.Hで走り抜けるでしょう。126M.P.Hや128M.P.Hまでしか出せないドライバーは、その程度のドライバーなのです。どこまで限界に迫れるかが問題です。一方で、無謀なドライバーは、ときに131M.P.Hで走ったりもしますが、それで身の危険を感じると次の周は126M.P.Hになってしまいます。上手く行けば130M.P.Hでも通り抜けることは可能ですが、下手をすればクラッシュ&リタイヤです。ごくわずかな安全マージンを残して129M.P.Hで走り続けることが、10分の9.5のドライブということなのです。』

 このように、運転のレベルをはかる物差しは、時速何キロといった絶対的な「速さ」ではないことがわかります。ある状況において限界とされる速さに対し、どこまで迫れるかが問題なのです。 

 プロフェッショナルな走りとは、いたずらに速さを求めるものではなく、薄紙一枚分の安全性を確保した上で、10分の9〜9.5の走りを続けることでなければなりません。究極の理想は、すべての周回で絶えず10分の9.5の走りを続けることなのです。

2001.04.12