レーサーに必要な体力1

 レースを走るのにはそれだけの力が必要です。さて、レーサーにはどれだけの体力があればいいのでしょうか?レーサーに必要な体力を、1周を走るのに必要な力と、それをゴールまで続ける力とに分けて考えてみましょう。

1周を走るのに必要な力

 1周を走りきるのに必要な力とは、コース1周を走る間に発揮される筋収縮量の総和のことです。特に、首や上体や上肢を支える力が重要です。上体をしっかり支えるためには、腰や背中、下肢の筋力も必要とされます。

 最も大きな筋力が必要なのは、首、肩、上腕(ひじと肩のあいだ)の筋肉です。この部分については、大きな横Gがかかるときに一時的に大きな力が必要とされます。筋には大きな張力がかかり、筋線維は太くなり、筋肉が肥大します。したがって、レーサーは腕や首が太く、肩幅が広く、胸板が厚くなるのです。

 と同時に、首や肩の筋肉は、それよりやや弱い収縮を長時間続ける必要があります。ステリングを握ったり、頭や上半身の姿勢を安定させたりするためです。レースが始まってから終わるまで、休みなくこれらの筋は運動を続けます。

 その他の体の部分については、弱い筋収縮を長時間続ける、あるいはやや弱い筋収縮を間隔を置いて繰り返し行うことになります。姿勢を保持したり、アクセルやブレーキを踏んだり、それを調節したりするためです。したがって、持久的な筋力が必要とされます。また、その有酸素運動を支えるために、十分な心肺機能が必要とされます。

 マシンのスピードが速くなるほど、加減速やコーナリングに伴う横Gも大きくなり、体を支えるために必要な筋力も大きくなります。また、マシンのスピードが速くなるほど、一定時間にこなす操作の量が多くなり、より俊敏な動作が必要とされるため、より強い筋力が必要です。したがって、マシンのスピードが速くなるほど、1周を走るのに必要な力は大きくなります

☆ポイント☆  ラップタイムが速いほど、大きな筋力が必要

選手の力とラップタイム

 選手の持つ技術や、マシンや路面などのコンディションが一定であると仮定して、レーサーの力と速さの関係を考えてみましょう。

 たとえ素人でも、ゆっくりのペースであればサーキットを走ることは可能ですよね。つまり、ラップタイムが遅ければ小さい力で走ることができます。逆に選手の発揮できる力が大きくなればなるほど、ラップタイムは速くなります。しかし、選手にどんなに大きなパワーがあっても、マシンの性能による限界もありますから、ある程度以上にラップタイムを縮めることはできません。このときのラップタイムが、そのマシンのその条件における限界タイムということになります。

 レーサーは、この「限界タイム」を出すためにマシンに乗っているわけですから、限界タイムを記録できる以上の体力を持ち合わせていなければなりません。選手が十分な体力を持っていれば、安定して限界タイムを出すことができます。したがってマシンの条件を変えた際のタイムの変化が明らかになり、セッティングの作業が進めやすくなります。一方、体力に不足がある場合には周回毎のタイムにばらつきが出ます。

 逆に、どんなに選手の力が大きくても、限界タイム以上にはマシンは速くならないので、十分な体力のある選手は常に余力を残して走っています。ですから疲労が少なく、精神的にも余裕があり、より長い時間パワーを保つことが可能です。

☆ポイント☆  筋力を鍛えてスピードアップしよう!

ゴールまで続ける力

 ゴールまで続ける力とはいわゆる持久力のことです。1周を走りきるために必要なパワーを、レースの最後まで維持する能力のことです。有酸素運動の能力と、それ以外の耐久力にわけられます。
   
有酸素運動の能力
   エネルギー代謝の効率・・・糖質代謝・脂質代謝
   酸素の取り込みや酸素消費の効率・・・心肺機能
   グリコーゲンの貯蓄量・・・・・・・・・食生活

それ以外の耐久力(疲労しにくさ)
   筋力的な余裕
   熱に対する強さ
   精神的な強さ

 海外の先輩レーサーたちは、「レースの最初から最後まで、あるいはテストのすべての周回で、マシンの最大の速さを出し続けることができるように、十分に鍛えておくべきだ」といっています。疲労のためにそれができなくなることは恥ずかしいことであり、そのマシンに乗る資格がないといわれても仕方がないのだそうです。「マシンに乗る前にやるべきことがあるはずだ」「家に帰って鍛え直してこい」と手厳しいコメントが並びます。
 レースの途中でバテてペースが鈍ったり、マシンから降りた途端にへたり込んだりすることは、プロのレーサーとして恥ずかしいことなのです。

2000.08.25