ヘモグロビン2

 前回はヘモグロビンの働きについてまとめてみました。今回は、ヘモグロビンの働きを阻害する物質について考えてみましょう。

一酸化炭素とヘモグロビン

 ヘモグロビンには4つの酸素結合サイトがあることは前回述べました。この酸素結合サイトには、酸素以外の物質も結びつくことができ、ヘモグロビンの酸素運搬能を阻害します。代表的なものとして一酸化炭素(CO)があり、その他、一酸化窒素などの有害ガスもヘモグロビンと結合します。

 一酸化炭素(CO)はたばこの煙や車の排気ガス中に多く含まれる物質です。ガソリン車の排気ガス中には1〜10%の濃度で一酸化炭素が含まれ、ディーゼル車の排気ガス中にも0.01〜0.06%というわずかながら一酸化炭素が含まれます。一酸化炭素は酸素の約250倍という強い力でヘモグロビンと結合します。このため空気中の一酸化炭素濃度がさほど高くなくても、血液中の一酸化炭素の濃度は高くなる傾向があります。

 ヘモグロビン(Hb)によって運ばれた酸素は、筋肉などの組織中で放出されますが、4つの結合サイトのうちの1カ所に一酸化炭素が結びついたヘモグロビン(カルボキシヘモグロビン(CO-Hb))は、他に結びついている酸素を放出しにくくなります。そのため、血液中には酸素が含まれていても、組織は酸素を利用できず、低酸素状態に陥ります。つまり血液中に含まれる一酸化炭素の濃度以上に、酸欠の症状は強く表れます。このようにして、わずかな一酸化炭素が、重篤な酸欠状態を引き起こすのです。

 CO-Hbの量は正常な成人では0.2〜0.5%ですが、喫煙者では5〜10%を示すこともあります。これがあまり高くなると、体の組織の酸欠のために体の正常な機能が保てなくなります。CO-Hbの割合が10%を越えると頭痛や吐き気、めまい、動悸などの症状が出現し、50%を越えると意識がなくなり、死亡する場合もあります。

 体内に取り込まれた一酸化炭素が体の中から出ていくのには時間がかかり、血中のCO-Hb濃度が約半分に減少するのに必要な時間は、ふつうの空気を吸っている状態では4時間、100%酸素の吸入で80分といわれています。したがって、10%まで上昇したCO-Hbが正常化するには、約半日〜1日かかる計算になります。

 CO-Hbが増えればそれだけ酸素運搬能が落ちますから、有酸素運動の能力は低下します。CO-Hbの濃度が1%上昇すれば、有酸素運動の能力は数パーセント低下すると予測されます。このように一酸化炭素は、日々積み重ねたトレーニングの効果を台無しにし、ドライバーのパフォーマンスを著しく低下させます。

 狭いガレージの中で車のエンジンをかけていると、一酸化炭素などの有害ガスの濃度が高くなって危険です。本人も気づかないうちに、一酸化炭素がドライバーの持久力を削ぎ落としているかもしれません。「ドライバーは、エンジンをかけた車の置いてあるピットの中にはなるべく入らないようにしましょう」と海外の教科書には書かれています。特にレースの直前にはたばこの煙や排気ガスを吸いこまないように気をつけた方が賢明です。

 また、交通量の多い道路でランニングなどのトレーニングを行うと、多くの有害ガスを吸入してしまいます。光化学スモッグの生じるような地域においては、道路以外の場所でも同様です。日々の影響が長期に積み重なると、体を鍛えるどころかかえって呼吸機能の低下につながります。道路でのトレーニングは、歩行者安全の面からも危険性が大きいので、トレーニングを行う際には、公園や運動場のような、空気がきれいで安全な場所を確保するように心がけましょう。

☆ポイント☆  一酸化炭素などの有害ガスに気をつけよう

2000.07.15