組織内でATPを産生するしくみ
すべてのATPが分解されてAMPになってしまうと、運動が続けられなくなります。そこで、筋細胞内でATPを合成する働きが重要です。今回は炭水化物(糖質)からATPをつくる経路について考えてみましょう。
炭水化物(糖質)を利用してエネルギーを産生するしくみを解糖系と呼びます。解糖系の始まりは血糖(血液中の糖分=グルコース)のリン酸化です。
しかし運動時には血糖だけではエネルギー源が不足するため、各細胞はグリコーゲンを貯蓄していて、エネルギー需要が高まると必要に応じてグリコーゲンを分解して使用します。グリコーゲンは筋肉や肝臓に蓄えられており、筋肉のグリコーゲンは解糖系の働きにより筋収縮のエネルギー源として使われます。肝臓のグリコーゲンは、血液中の糖分が不足すると分解され、運動中の血糖の低下を補います。持続的な運動では、燃料となるグリコーゲンの貯蔵量が持久力の鍵を握ります。
1 嫌気的解糖(酸素が不足しているときの糖質代謝)
グルコース1分子から、乳酸2分子とATP4分子が合成されますが、合成のためにATP2分子を消費するため、差し引きATP2分子が得られることになります。グリコーゲンからの合成では、使用されるATPが1分子で済むため、グルコース1分子当たりのエネルギー合成はATP3分子となり、血糖からの合成に比べるとやや効率的です。
酸素が不足する状態では、このように乳酸を産生しながらATPを合成します。乳酸が多くなると、組織や血液が酸性に傾き、細胞の活動が低下します。嫌気的な解糖で運動を続けられるのは1〜3分程度です。それ以上の時間、運動を続ける場合には、有酸素的なエネルギー産生が必要です。
2 好気的解糖(酸素が十分にあるときの糖質代謝)
酸素が十分にある状態では、解糖系は血液中の糖分やグリコーゲンを利用し、ピルビン酸を生じます。1分子のグリコーゲンやグルコースから2分子のピルビン酸を生じます。
好気的解糖では、グルコース6リン酸からピルビン酸を生じる同じ過程で、嫌気的解糖に比べて6分子のATPを余分に合成することができます。ですから、グルコースからピルビン酸を生じる場合にはATP(4+6-2=)8分子、グリコーゲンからピルビン酸を生じる場合にはATP(4+6-1=)9分子が得られます。
好気的条件下では、つくられたピルビン酸はクエン酸回路に送られ、乳酸は生じません。クエン酸回路の働きにより、引き続き大量のATPが産生されます。(次回に続く)
2000.05.18