「パフォーマンスピラミッド」を開く
今回はさらに上の段の石積みについてみていきましょう。
競技に熟達する
ここから上の段は、それぞれの競技に必要な、専門的な技術や能力の獲得に関係する分野です。
協調
協調とは、体の各部分の動きを統合してひとつの目的を達成することです。ひとつひとつの筋肉の収縮や技術、判断力などを総合して、運動をうまく行うことです。
たとえば、速いボールを投げるためには、肩の筋力を鍛えただけでは不十分です。その筋力を「ボールを投げる」という運動に活かすためには、ボールの握り方や、ボールを離すタイミング、筋肉に力を入れるタイミング、腕の振り方などが、総合的に上手く働かなければなりません。筋力だけあっても、そのパワーを発揮するタイミングがつかめなければ、運動の上達には結びつかないのです。
また、野球の投手として活躍するには、肩の筋力だけでなく、きちんとボールをコントロールして投げる能力が必要です。投球のコントロールをつけるためには、下半身の使い方やボールを離すタイミング、ボールの握り方、投げる方向をきちんと見ることなどが大切でしょう。運動が上手くなるためには、そうしたひとつひとつの運動要素をうまく「協調」させることが重要なのです。
練習
練習とは、そうした協調運動をひとつひとつ獲得することで、そのスポーツに必要な技術に熟達することです。野球に例えれば、守備練習、打撃練習、投球練習などのことです。
練習によって、そのスポーツに必要な運動能力を適切に発揮できるようになります。レースにおいては、視覚情報などの五感による情報をうまく取り入れて、すばやく判断し、的確な手足の操作に結びつけることが重要です。
多くのスポーツ選手は、この「練習」を重視し、多くの時間を費やします。しかしそれ以前に、これを支えるために、すでにたくさんの石積みが必要であることをよく理解して下さい。この下の層までがしっかりできていなければ、突然上の方に大きな石を積もうとしても無理というものです。レースもスポーツである以上、大切なのはテクニックばかりではありません。十分なテクニックを発揮できるための体力的な裏付けが重要です。
ピラミッドの頂上
一般に、レースをするために最も重要と考えられがちな、才能やセンス、前向きな性格、競技に対する適性などは、ずっと上の方にちょこっと乗っています。ピラミッドの頂上に、人々の視線が集まるのはごく自然なことかもしれません。一番上の段に丸い石を乗せるか、四角い石を乗せるかによって、確かにそのピラミッドの印象は大きく変わるでしょう。それと同じように、これが選手のパフォーマンスに最終的に大きく関わってくることは確かです。
しかし、たとえばその同じ石が、地面の上にひとつコロっと落ちていたらどうでしょうか?それは単なる石に過ぎず、あまり誰も注目しないかもしれません。積み上げられた石積みの頂上に乗せることで、その石の存在価値も輝きも一段と増すのです。どんなに優れた才能を持っていても、それを発揮するための十分な土台がなければ、せっかくの才能も活かされないで終わってしまいます。そのことを忘れないようにしましょう。
「才能」は石積みの最後にちょこんと乗せるようなものであって、これひとつですべてが何とかなるものではないのです。それだけでピラミッド(=パフォーマンス)の大きさが変わるわけではないのです。てっぺんの三角部分がなければピラミッドとしては格好がつかないように、「才能」のない選手はあまり魅力的ではないかもしれません。しかし、少なくともその下の段までは、自分の力で鍛え、積み上げることが可能です。
ピラミッドの頂上に乗せるべき輝かしい才能と適性を持っている選手ほど、しっかりした土台と石段を積み上げて欲しいものです。
2001.01.11