モータースポーツもスポーツですから、運動能力を鍛えなければ勝つことはできません。しかし、レースでは体力よりもむしろテクニックや才能の方が重要では?と思う人も少なくないでしょう。そこで御紹介したいのが、アリゾナ大学のRichard Munroe先生が提唱した「パフォーマンスピラミッドPerformance Pyramid」という考え方です。スポーツに必要な要素をピラミッドの石積みに見立てて、わかりやすく説明しています。「Championship Training」という本は、2輪レーサーのために書かれたトレーニングの教科書ですが、このパフォーマンスピラミッドの概念に基づいて解説しています。この本を参考にしながら、パフォーマンスピラミッドについて紹介したいと思います。
ピラミッドを建設するときのことを考えてみましょう。一番下の段には、大きくて安定した石をしっかり置きたいですよね。下の段がしっかりしていなければ、その上の段を積み上げることはできません。高く積もうと思えば思うほど、土台が重要になってきます。土台がぐらついていては、その上に積み上げたものも台無しになってしまいます。
土台
パフォーマンスピラミッドの一番下の土台は、「organic soundness&physique 健康と体格」とあります。
最も大事なのは、体が健康で、体の機能が正常であることです。どんなに才能のある選手でも、運動できないような病気があるのに、無理にレースに参戦すべきではありません。また、スポーツの真の目的は、それで体を壊したり、命を縮めたりすることではありません。体が壊れるまで練習した、命がけで戦った、などというとかっこよく聞こえますが、本当のスポーツ選手はそんなことではいけないのです。スポーツで体を壊すのは、トレーニングの方法が適切でないからです。レースで命を失うのは「失敗」であり「敗北」なのです。
また、そのスポーツに適した体格・体型を持つこともひじょうに重要です。たとえば、お相撲さんの新弟子検査でも、最も重要なのが身長体重の体格検査です。どんなに技のある力士でも、まず新弟子検査に通らなければプロのお相撲さんにはなれません。また、バレーやバスケットのセンタープレイヤーは背が高ければ有利です。もちろん、中には背の低くて優秀な選手もいますが、体格がハンデになることは否定できません。
レーサーにも適した体格・体型があります。4輪レーサーに求められる体型は一般に次のように言われています。
- 首や肩、腕ががっしりしていて、上半身が逆三角形である
- それ以外の部分は全体にスリムである
しかし、こうした体格や健康の問題は、本人の努力だけではなんともできないこともあります。興味を持ったスポーツにちょうど適した肉体を持っていること、健康で病気がなく自由にスポーツを楽しめることは、ひじょうに幸運なことであると言わなければならないでしょう。
その上の段に乗っているのは、「エネルギー代謝」や「神経系」など、運動のために必要な、体の基本的な機能です。これらがきちんと働いていない場合というのは、病気あるいは機能障害があるということになり、運動のために特別な配慮が必要となります。
次回からは、上の段の石積みについて順に見ていきます。
2000.12.19