いつの頃からか、赤ちゃんをオンブする人がほとんどいなくなり、さらには抱っこする人も減ってきて、赤ちゃんはベビーカーに乗せて歩くのが普通になりました。それとともに、赤ちゃん駕篭(クーファン)やベビーキャリアに乗せたまま、持って歩く人も多くなりました。
赤ちゃん用の駕篭というのは、籐や布などを編んだもので、中に赤ちゃんを寝かせて置く物です。ハンドバッグの様な大きな持ち手がついていて、ここを持って提げて歩きます。
ベビーキャリアというのは、今は、新生児用のカーシートと兼用に作られている物が多いようです。プラスチック製の椅子に、ベルトで赤ちゃんを固定できるようになっていて、部屋で寝かせて置いたり、あるいはカーシート兼用タイプであれば、そのまま車に乗せることができます。大きなプラスチック製のアームのような持ち手がついていて、ここを持って提げて歩きます。
これらの入れ物は、赤ちゃんを寝かせたまま、入れ物ごと持って歩けて、とても便利な様に思います。眠っている赤ちゃんを起こさないで済むかもしれないし、タオルや布団をかけたまま、寒い思いをさせないで済むかもしれません。しっかりした入れ物によって、大事に赤ちゃんが守られていて、安心なような気がします。
しかし実際には、ひどく事故が多くて危険!!なのです。
まずは、乗せていた赤ちゃんを落としたという人が少なくありません。
赤ちゃん駕篭の場合、取っての片方が手からはずれると落ちます。しっかり持っているつもりでも、取っ手自体が太くて握りにくいもので、何かの瞬間に片方が手から離れることがあります。車に乗せようとしてひっくり返ったり、玄関のドアを開けようとしてひっくり返ったり、玄関に鍵をかけようとしてひっくり返ったり。。。階段の上り下りでは、他人に蹴飛ばされてひっくり返ることもあります。
持ち手が、本体からちぎれて取れたケースもありました。だからといって、「強度が足りない」といってメーカーを責めることもできません。本来そうした駕篭は、赤ちゃんを入れたまま持って歩く様には設計されていないため、赤ちゃんの重みに耐えかねて、持ち手が壊れることがあるのです。良心的なメーカーの商品であれば、「赤ちゃんを寝かせたまま持って歩かないで下さい」という注意書きが書かれています。
ベビーシート、ベビーキャリアの場合は、赤ちゃんをシートにベルトで固定できるので、シートから転落する可能性は少なくなりますが、シートごと落とす場合が少なくありません。つるっとしたプラスチックの固まりに、3キロから5キロほどの重みのある物体が乗っているのですから、女性の腕力で支えるのは難しいのです。車への乗せ降ろしの時など、ちょっとバランスを失うと、腕からするりと抜け落ちて、ひっくり返ったり落ちたりします。
また、この場合、アームの強度は十分ですが、アーム自体が固く太くて握りにくく、提げて歩くのは決して楽ではありません。
シートベルトの固定が甘ければ、そこからさらに赤ちゃんが落下します。シートごと落ちた場合でも、シートが横倒しや下向きになれば、赤ちゃんが地面にたたきつけられ、さらに上からシートでつぶされる格好になります。
そうやって赤ちゃんを落とした場合には、無傷で済むこともないわけではありませんが、頭蓋骨骨折や脳内出血を来すような重篤なケースも少なくありません。その場合、どんなに急いで手を尽くしても、救命し得ないケースもあります。幸運にも全快して帰宅する子もありますが、そのまま一生寝たきりということも少なくありません。
こうした新生児の墜落事故というのは、抱っこを基本としていれば、ほとんどあり得ないことです。だっこしたまま転んでしまったというような話を除けば、まず聞いたことがありません。その場合も、抱いている人の腕が自然と子供を守り、最悪の事態に至るケースはそう多くありません。しかし、駕篭やキャリアを使う人達には、しばしば危険な事態が発生しています。
たとえ落ちないにしても、駕篭やキャリアの中の赤ちゃんは、ちっとも安静ではありません。持っている人が歩くのにつれて、大きく揺さぶられています。抱っこしているのに比べると、かなり大きな揺れです。首が座っていない状態の赤ちゃんでは、少々危険なほどです。
実際に持って歩いてみると、いちいち足で蹴飛ばして歩いているような感じになります。その度に、その衝撃が赤ちゃんを揺さぶります。そうしないようにと思うと、持っている腕にかかる負担が大きく、女性の腕力では些か無理です。
それは、階段の上り下りではさらに顕著になります。片手で持つには重すぎて不安定、かといって両手では上手く持てません。両手で抱えると、足下が見えなくなって、かえって危険です。
また、駕篭やキャリアが、きちんと水平に保たれていればよいですが、常に水平に保つことは難しく、頭がお尻より下がってしまうこともあります。それでは逆さづりにされているようなもので、あまりよくありません。これは、抱っこをしていれば、決してないことです。
さらには、赤ちゃんが頭の方にずり下がってしまって、頭が駕篭に押しつけられるようなこともあります。そうした場合には、首を痛めてしまうこともあるし、呼吸がきちんとできなくなる可能性もあります。逆に、足の方にずり下がっていけば、足が圧迫されることもあります。そうして、足がすっかり紫色になってしまった赤ちゃんもありました。その状態が長く続けば、足に血が通わなくなって壊死してしまいます。
このように、赤ちゃんを駕篭やキャリアに入れたまま運搬するのは、実に危険です。しかし、今もそうした商品が売られ、寝かせたまま移動するのが、いかにも快適で安心であるかのようなイメージを抱かせています。
ベビーキャリアに入れたまま持ち運ぶのが、欧米では普通なのでしょうか? だとしたらそれは、階段の少ない広い場所が確保されていて、車への乗り降りのスペースも、ベビーカーへの乗り換えのスペースも十分だからでしょう。少なくとも、日本の家屋や車や駐車場の事情を考えると、利便性に比べて危険が大きすぎると思います。
本当に赤ちゃんのことを大事に思うなら、たとえ眠っていても、移動するときには必ず抱き上げて、人の腕で移動させてあげて下さい。蹴飛ばしながら歩くのではなく、人の手で守ってあげて下さい。
2002.10.19
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