世間のお母さん達はよく、「好き嫌いをしないように先生から言って下さい」と言ってきます。でも私は子供達に、嫌いな物を無理に食べさせることはしたくありません。だって、好き嫌いのせいで病気になった人は見たことがないし、本当に嫌いな物を無理に食べさせれば吐いたりしますからね。そんなことまでして食べる意味はあまりないと思うんです。無理強いされて食べるほど、気分の悪いことはありませんからね。まあ、普通程度に好き嫌いがあって、普通程度になんでも食べれば大丈夫でしょう。
ある日、女の子を連れてきたお母さんが言いました。「この子は牛乳ばっかり飲んで、ご飯やお野菜をちっとも食べないんです。ちゃんと食べるように、先生から言って下さい」
またきたか、と思いながらも私は言いました。「牛乳はウシさんの赤ちゃんが飲むミルクだから、牛乳ばっかり飲んでいると、大人になったときにウシになっちゃうよ」
これを読んでいるほとんどの大人は、「何を馬鹿なことを言っているんだ。そんなことでだまされる子供がいるか?」と思うでしょう。でもその子は、私の言葉にさっと顔色を変えました。母親がさらに揺さぶりをかけます。「ほら、ウシになっちゃうってよ。どうするの?」女の子はますます青ざめてしまいました。
私「ウシになったら困るよねぇ」
母「ウシじゃなくてウサギさんになりたいんでしょう?」
女の子「うん」
私「ウサギさんになりたいんだったら、ニンジンや葉っぱをいっぱい食べないとダメなんだよ」
母「ほら、お野菜を食べないとウサギさんになれないってよ。今度から食べましょうね」
女の子「うん」
私「可愛いウサギさんになってね」
女の子「うん」
その女の子は笑顔で帰っていきました。大人達にだまされて、彼女がその後、野菜を食べたかどうかは確かではありません。小児科医はウサギになる方法も知っていなければならないという、そんなお話です。
かくいう私も秘かにウサギに憧れているのですが、なかなかウサギになれそうにはありません。誰か、ウサギになる方法を知っていたら、こっそり教えて下さいね。
2001.06.26
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