交通事故を考える1・・高速道路の路側帯歩行について

 先日、仙台近郊で発生した死亡事故を題材に、モータースポーツの経験から得られる交通安全の教訓について考えてみます。

事故の状況

 仙台市郊外を走る東北自動車道で、乗用車が路肩に乗り上げて横転。そこに後続のトラックなどが次々に追突。横転した車の運転者と同乗者の計2名が死亡。後続の車両1台が、事故現場を通り過ぎたところで停車。この車から降りて発煙筒を焚き、後続の車両に事故を知らせようと路肩を歩いていた男性が、後続の車両にひかれて死亡。

道路の状況

 事故発生時刻は午後10時55分頃。

 事故当時、雨は降っていなかったが、その前に降っていた雨のために路面はウェットだった。

 事故現場付近は、下り坂の右カーブ。この付近はカーブとアップダウンが多く、ふだんから80キロ規制がされている区間である。

 仙台市のインターに近いため比較的交通量は多く、インターに乗り降りする車のためにやや混雑しやすい。

横転した車両の問題

 前日に名古屋付近で行われた結婚式に出席して帰る途中でした。運転者は岩手県江刺市在住ですが、同乗者が仙台市在住であることを考えると、おそらくこの先のインターで降りて仙台市内に入る予定だったのではないかと考えられます。目的地まであと少しというところでした。時刻的にも遅く、運転者にはかなりの肉体的・精神的疲労があったと思われます。

 また、運転者については、車外に放り出されたという報道もありましたので、おそらくシートベルトをしていなかったと考えられます。同乗者についてはシートベルト装着の有無は不明ですが、全身を強打して死亡していることから、おそらく装着していなかったと推定されます。

 路肩に乗り上げて横転したらしいのですが、居眠りやカーブの見落としによるものなのか、単なるスピードの出し過ぎによるのかは定かではありません。

追突車両の問題

 追突車両から重傷者が出ていないところを見ると、各車両は十分な減速を行い、続発事故の防止のためにも十分な努力をしたと考えられます。またシートベルトをきちんと装着していたと考えられます。

 目前の車が横転した場合、それを避けて通るのはほぼ不可能であり、こうした場合に「前方不注意」を適用されるのはひどく不親切なようにも思います。しかし、「前の車がスピンしたから自分がリタイヤした」などと言い訳するドライバーを尊敬するモータースポーツファンはいません。直前の車が突然にスピンをしても、その事故に巻き込まれないように最善を尽くすのがドライバーの責任なのです。自分にその事故を避けるだけの力がなければ、それだけ広く車間距離をとる必要があります。あるいは自分がもっとスローダウンすればいいことです。それだけの能力がないのに、ただ周りの車にあわせて車間距離を詰め、スピードを出している車が多いような気がします。

後続車両の問題

 今回の事故で最も残念なのが、後続車両から降りて歩行中に犠牲になった人がいることです。この人は、事件現場を100メートルほど通り過ぎてから停車し、後続車両に事故を知らせるために発煙筒と停止板を持って路肩を歩いて戻っています。

 第1のポイントは、一般の通行車両は高速道路上では決して止まってはいけないということです。冷酷なようでも、そのまま無事に通り過ぎてその場から消えていなくなるのが、続発事故防止のためには重要なことなのです。

 レースの場合も、マーシャルカーや救急車が現地に駆けつけても、レース車両は安全なスピードで通過して、オフィシャルの指示に従うべきです。ドライバーが勝手にマシンを止めて救助作業を始めたりすれば、かえって続発事故の原因になるのです。

 第2のポイントは、高速道路の路肩を歩いて移動してはならないということです。やむを得ず高速道路上に車を止めてしまったときは、すぐにガードレールの外に出て、その外を歩かなければなりません。

 レースの場合も同じで、コースサイドにマシンを止めたドライバーは、一刻も早くマシンから脱出し、ガードレールの外側に安全に非難しなければなりません。

 しかし、実際の高速道路はレーシングコースとは違い、高架橋や崖の切り通しのところなど、どうしても路肩を歩かなければならないような区間もあるのです。今回の事故では、後続の車両が被害者の方に突っ込もうとしたため、崖を登って避けようとしたが、滑り落ちて轢かれたということでした。逃げ場がなかったのです。そうした高速道路の設計については、もう少し考える必要がありそうです。

 第3のポイントは、夜間の事故に発煙筒はほぼ無意味だということです。工事現場の交通整理をする警備員の様に、電気によって発光する棒でなければ見えません。

 三角停止板は夜間でも見えますが、これを置くためには事故現場から少なくとも50メートルは後ろに歩いて戻る必要があります。先に述べたように、その距離を歩いて移動するのはかえって危険が伴います。事故が起こった場合、すぐ近くのボタンを押すと、自動的に後続車両に危険を知らせるような情報システムができないものでしょうか?あるいは、道路上で停止している車両を認識して、自動的に事故発生を知らせるようなシステムも開発可能ではないでしょうか?

 私の車にも三角停止板は乗せてあります。しかし、オーバーヒートなどの車両故障でもあれば別ですが、本当の自動車事故の場面で、これを持って50〜100メートルも歩くのはほとんど不可能でしょう。女性の私にとってはとても重く、その距離を歩くのはとても無理だと思っています。とすれば、そうしないでも後続車両に停止車両のあることを知らせるようなシステムが必要ではないかと思うのです。

 なお、よく見えるようにというつもりなのでしょうが、車の屋根やトランクの上に三角板を乗せている人も見かけます。しかし三角板が高い位置にあると、後続の車両から見た場合、実際の場所よりも遠くに止まっているように錯覚します。そのため、三角板を置いていても追突される可能性が出てきます。三角板を置く場合は、路面の上に設置しなければなりません。

再発防止のために

 この事件で気になるのは、この善意の歩行者を轢いたドライバーが「前方不注意」で罪を問われていることです。確かにどんな状況でも、事故を避ける努力は必要です。しかし、このドライバーもすでに事故現場を避けるために最大限の努力を払っており、その状況でさらに夜の高速道に歩行者があると認識するのは無理というものでしょう。轢かれた被害者の方には誠に申し訳ありませんが、モータースポーツの常識から考えれば、むしろ高速道路上を歩いている方が間違いだと判断せざるを得ません。それはまさに善意から出た行動であり、決して責められるものではありませんが、自動車事故の防止のためには、その犠牲を美談として伝えるのみならず、敢えてその間違いをきちんと指摘しておく必要があると思います。そうでなければ、そうした犠牲が後を絶たないでしょう。

 また、この多重クラッシュの原因となった横転車両の乗員がシートベルトをしていれば、死亡事故にはならずに済んだ可能性が大きいのです。シートベルトとチャイルドシートの重要性についても改めて認識を高く持ちたいものです。

2001.10.14