これまで長々と書いてきましたが、結局のところ、事故を未然に防ぐより他に、生き延びるチャンスはなかったように思われます。なんとか事故を起こさないで済む方法がなかったのかどうか、今後改良できる点はないのか、考えてみようと思います。
年齢的な問題
49歳という年齢は、ベテランの多いNASCARドライバーの中においては、それほど高齢というわけではありませんが、決して若いとは言えません。しかし、この年齢まで第一線で活躍しているということは、それだけ強靭な体力を持ち合わせていることの証明でもあり、49歳という年齢は問題にならなかったと思います。
持久力
このレースは、シリーズの開幕戦でした。オフシーズンの鍛錬が足りなければ、シーズン中に比べて持久力の減退している可能性もあります。しかし、このレースで彼は最終ラップまでしっかりレースをコントロールしていました。最後まで走りきるだけの持久力は十分にあったと考えられます。
パワー
怪我の状況を振り返っても、ほとんど無用な骨折はなく、激しい衝突に際して、骨を守るだけの筋力と、骨の強さを兼ね備えていたことがわかります。彼がもっと鍛えていたら骨折せずに済んだだろう、と考えることはできないのです。
心の隙はなかったか?
事故の引き金となったのは、後続のマシンとの軽い接触だったと思います。レースというのは、人より速く走るのが大義です。皆がそれに向かって全力を尽くしているときには、たとえ雑然としていても、全体として調和が保たれるように思うのです。そこに「他に勝利を譲りたい」という思惑が混じってくると、微妙なバランスが崩れてしまうのではないでしょうか?私には、真剣勝負に手心を加えたことが、唯一の隙であったように思えてなりません。
オーバル
これまでのアメリカの文献を見ると、「力のない選手が壁にたたきつけられる」のであって、そうならない努力をすべきという意見が主流でした。そのため、オーバルを走る選手達は、壁にぶつかっても壊れない身体をつくろうと努力してきました。レース距離を十分に走りきれる体力も身につけました。筋肉の強化によって、手足や首の骨折も少なくなりました。それでもなお、救い得ない場合があるということを改めて認識させられた事故であったように思います。
コンクリートウォール
衝突の衝撃を小さくするためには、マシンがなるべくゆっくり止まる必要があります。マシンがすっかり運動を停止するまでに移動する距離を少しでも長くすることが大切です。衝突の瞬間に、壁側が数十センチでも後退すれば、それだけ衝突の衝撃を和らげることができます。それだけ多くの命を救うことができます。命を守る柔らかい壁・・オーバルにもそんなものができないでしょうか?
その他
頚部を支える装備やヘルメットの力学的構造なども、まだまだ改良の余地があると思います。近年、ヘルメットの重量が重くなるほど、頭蓋底部骨折には不利に働くことが指摘されています。ヘルメットの重量と強度の問題もまだ検討の余地があります。また、ヘルメットを固定している顎紐に掛かる力をどう逃がすかなど、検討しなければならない問題が残っているようです。シートベルトやヘッドレスト、頚部を支える装備等との兼ね合いも含めて、この辺がこれからの検討課題ということになるでしょう。
このシリーズはこれで終了します。皆様からの御意見や御感想も聞かせて頂けたら幸いです。
2001.04.06