デイル・アーンハートの事故を振り返る3

 前回、アーンハートの直接の死因が頭蓋骨底部の骨折と考えられることを述べました。頭蓋骨底部骨折とはどのような外傷なのでしょうか?

頭部の構造

 脊柱(背骨)の上に接しているのが頭蓋骨底部です。その上に脳が乗っています。脳の外側をとりまくように、前面には顔面の骨、顎(あご)の骨があります。脳の表面を丸く覆うように、頭蓋骨円蓋部があります。つまり、頭蓋骨底部は頭の深いところにあり、表面からはその形状がわかりにくいのです。したがって、骨折をしているかどうかもわかりにくい位置関係にあります。

頭蓋底部骨折

 脊柱と頭蓋骨の大まかな関係をイメージすると左図のようになります。この外側に顔や顎が付着していると思って下さい。

 頭蓋骨はちょうどニワトリのたまごのような感じです。たまごの中身が脳です。たまごの殻の(図の)下側が頭蓋骨底部で、その一番下のところで脊柱と接続しています。

 これがぶつかったような場合、普通は円蓋部や顔面骨が骨折します。たまごを机の角にたたきつけた場合、ぶつけたところが陥没したり、ヒビが入ったりするのと同じです。頭蓋骨底部は、直接、外の物にぶつかることはないのです。

 しかし、頭蓋骨底部が骨折する場合もあります。その代表的な原因が、交通外傷と墜落です。

 墜落の場合、ちょうど脊柱(図の棒の部分)で頭蓋骨(図のたまご型の部分)を突っつくような格好になります。これによって底部骨折が生じます。落ち方によっては、脊柱の骨折を伴うかもしれません。

 交通外傷の場合の底部骨折は、墜落の場合と同じような脊柱による圧迫の他、脊柱が頭蓋骨から激しく引っ張られる(図で、棒を思いっきり引っ張る)ことや、頭蓋骨全体にかかる歪みが大きくなる(たまごをひねりつぶす)ことによって生じると言われています。交通事故の場合、首や頭が激しく揺さぶられたりぶつかったりすることが多いので、脊柱との接続部である頭蓋骨底部に大きな力のかかることは容易に想像されます。

 特に底部骨折の頻度が高いのは、自動2輪の事故であると言われています。バイクの場合はヘルメットをかぶっているため、円蓋部や顔面骨が比較的守られるからです。これは、円蓋部や顔面・下顎の骨折を減少させる一方で、その部分の骨折によって緩衝されるべき衝突のエネルギーを、頭蓋骨の中心部にそのまま伝えてしまいます。すべての歪みが頭蓋骨底部に集中してしまうのです。したがって、ヘルメットの強度が強すぎる場合や、ヘルメットの重量が重い場合には、頭蓋骨底部の骨折はかえって増加する可能性があると言われています。

底部骨折の特徴

 頭蓋骨底部は、表面からは見えにくい場所にあります。したがって外から見た場合に、一見、何の異常もないように見えることもあります。しかし、ほとんどの場合即死を来しますので、顔色は悪く、呼吸をしていません。底部骨折があるかどうかは、病院に運んでレントゲン写真などを撮らないとはっきりとは診断できません。外からわかるわずかな手がかりは、耳や鼻から血液や髄液(無色透明の液体)が流れ出ていることです。

 頭蓋骨底部骨折のあらましについて、わかって頂けたでしょうか?次回は、レースにおける頭蓋骨底部骨折について取り上げます。

2001.02.28